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NGCの鑑定プロセスについて

アンティークコインの価値を左右する重要な要素の一つが「鑑定(グレーディング)」です。

 

では、その鑑定は具体的にどのように行われているのでしょうか?

 

今回は、世界中のコレクターや投資家から高い信頼を得ている鑑定機関「NGC(Numismatic Guaranty Company)」によるコイン鑑定の仕組みをご紹介します。

 

本記事では、以下の公式ページを参考に内容をまとめています。

参照:https://www.ngccoin.com/coin-grading/grading-process/ngc-grading-process.aspx

 

コインの受け入れと準備

コインがNGCに届くと、まずはデータベースに登録され、バーコードが付けられます。登録されたコインは、セキュリティが徹底された保管庫に、鑑定調査が開始されるまで大切に保管されます。

 

鑑定前に、vairety attribution(品種分類)を専門とする貨幣鑑定士によって検査されます。

 

コインは、公表されている参考文献とそれぞれ比較され、発行年や刻印などを照合しながら判定していきます。

 

ここで重要なのは、この作業がコイン提出者の名前を伏せた状態で行われるため、NGCの鑑定システムはユニークで公平なものとなっていることです。

 

どういうことか?

 

仮に提出者の情報がわかってしまうと、

  • 有名ディーラーだから甘く採点
  • 特定の人物に好意的な鑑定になる

といったように「バイアス(偏見)」が入る恐れがあるのです。

 

コインそのものの状態だけで、純粋に鑑定される」必要があるため鑑定士には提出者の名前や背景を一切知ることができないようにされているのです。

 

この匿名性の仕組みにより、

「誰が出したかに関係なく、全てのコインが同じ基準で評価される」

=公平性が保たれている

というわけです。

 

 

鑑定(グレーディング)

NGCの鑑定は、最低2名以上の専門鑑定士によって行われます。

 

さらに、公平性を維持するために、NGCの鑑定士はコインの売買に関与することはできないことになっています。

 

一人ずつが独立して鑑定を行い、それぞれの評価がシステムに記録され、最終的なグレードが決定されます。

 

また、NGCの鑑定では基本的な評価に加えて補足的な情報が付け加えられる場合があります。

 

これは、コインの細かな特徴や劣化状態などをより正確に表現するための情報となります。

 

例えば、銅でできたコインは経年により化学反応を起こして赤みが失われていく性質があります。

 

そのため、NGCではこうしたコインに対して以下のような色の状態を明記します。

  • RD:鋳造時の赤みがしっかりと残っている
  • RB:赤と茶が混ざっている中間的な状態
  • BN:赤みがほとんどなく、茶色になっている

 

このような補足情報は一見マニアックに思えるかもしれませんが、実際には市場価格、価値を大きく左右する重要な情報となります。

 

NGCはこのような補足情報を通じて、一枚のコインをより深く、正確に伝えることを可能にしています。

 

Details グレーディング

表面に明らかな傷や線状のスレなどの粗悪な状態のコインは、通常のグレーディングとは異なる方法で評価されます。

 

NGCでは、このようなコインを適切に評価するために「Details Grading」という特別な方式を採用しています。

 

摩耗の程度や損耗に応じて、Details Gradingを適用していきます。

 

Details Gradingラベルはしばしば特徴的な紫色のラベルを使用してスラブに封入されるそうです。

 

鑑定できないケース

NGCでは、多くのコインを公平かつ厳密に鑑定・封入していますが、一部のコインは封入(エンキャプスレーション)不可と判断される場合があります。

 

これは、鑑定の信頼性を守るために設けられた重要なルールとなります。

 

たとえば、以下のようなコインはNGCの判断により封入対象外となります。

  • 偽物(贋作)
  • 日付や造幣マークが改変されたもの
  • PVCなどの活性残留物が残っているもの

 

PVCは長期間にわたってコインの表面に悪影響を与える物質で、放置しておくとどんどんコインが劣化してしまいます。

 

 

NGCの採用する等級

コインの価値や状態を知るうえで欠かせないのが、「グレード(等級)」です。

 

NGCでは、世界中のコレクターや市場で共通して使われている70段階の数値グレードスケールを採用しています。

 

これは「Sheldon Scale」と呼ばれるもので、コインの保存状態や摩耗の程度を示す指標です。

 

【Business Strikes(流通用コイン)のグレード一覧】

等級記号 数値 評価基準(英語)
MS 60–70 Uncirculated
AU 50, 53, 55, 58 About Uncirculated
XF 40, 45 Extremely Fine
VF 20, 25, 30, 35 Very Fine
F 12, 15 Fine
VG 8, 10 Very Good
G 4, 6 Good
AG 3 About Good
FA 2 Fair
PR 1 Poor

 

このように、数値が大きいほど保存状態が良く、価値も高くなる傾向があります

 

【Proof(プルーフ)コインにも同じ基準が適用される】

プルーフコインに関しましても、も同様に1~70までのスケールでグレーディングされますが、等級の前に「PF(Proof)」という接頭語が付きます(例:PF70)。

 

【グレーディングの最高点「70」とは?】

「MS70」や「PF70」は、コインの世界で完璧とされる最高グレードです。

 

NGCでは、5倍拡大で見ても製造後の欠陥がまったくない状態を「70」と定義しています。これに該当するコインは非常に稀で、多くのコレクターが憧れる存在です。

 


コイン収集において、状態の評価=グレーディングは資産価値に直結する重要な要素です。

 

NGCでは、厳格かつ公正な評価体制のもと、世界中のコレクターや投資家から高く信頼されています。

 

この記事で紹介した通り、NGCの評価システムには以下のような特徴があります。

  • 専門家によるチーム制でのグレーディングと、提出者情報を伏せることで保たれる公平性
  • コインの種類や状態だけでなく、色味や細部のディテール(FB・FBLなど)まで評価
  • ダメージのあるコインにも「Details Grading」で正確な情報を表示
  • 真贋や改造が疑われるコインなどは認定不可とし、透明性を確保
  • 70段階スケールを用いた、客観的で明確な評価基準

コインの売買をする方はもちろん、長期的なコレクションや資産形成を考える方にとっても、NGCのグレーディングは非常に価値のある情報となります。

 

今後、コインを選ぶ際には、ぜひそのグレーディングの意味や背景に目を向けてみてください。

 


 

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