【これはなんですか?】
このWebマガジンは、アンティークコインの魅力・面白さを広めたいという店主の思いから生まれました。
アンティークコインは、一つ一つに歴史的な物語、“アイデンティティ”があり、知的好奇心を満たしながら、コレクションとしても楽しめるという側面を持っています。これは、単なる数字の変動に一喜一憂する暗号通貨や株式、FXなどとは異なる、アンティークコインの特徴でしょう。
このような、物語としての面白さ・奥深さを伝えるべく、アンティークコインに関する情報を発信していきます。
【あなたは誰ですか?】
このマガジンは、店主の山本と、その友人であり、協力者であるMが執筆しています。
- 山本
高校3年生まで理系だったものの、浪人期に文系へ転向。
受験レベルの世界史は一通り修めたものの、コインの世界はあまりに奥深く、まだまだ修行中。
(詳細は「店主より」にて) - M
京都大学 総合人間学部を経て、同大学の人間・環境学研究科(修士)を卒業。
本連載のメインライター。
山本とは高校・大学の同期。理系で大学に入学したはずなのに、在学中にあれよあれよと文学の道へ。
分析美学と文体論と言語学の狭間のような、よく分からない修士論文を執筆し指導教員を驚かせた。しかし、世界史に関しては興味があるだけの初心者。
やたらと何でも考えすぎる凝り性で面倒な性格を買われ、度々事業に関する協力を仰がれている。
【結局これはなんですか?】
本記事は、私たちの自己紹介でもあり、一種の懺悔と言い訳でもあります。
冒頭で偉そうに「面白さを発信します!」などと大見得を切りましたが、実際のところ、私たちは歴史の専門家ではなく、大学の専攻も歴史とは縁遠いものでした。つまり、私たちもまた初学者なのです。
そこで、まずはアンティークコインに関する海外の古典的名著を読み進め、その概要をまとめた記事を連載する予定ですが、凝り性で面倒なわたくしMが、次のような懸念を抱きました。
「本を逐語訳してまとめるだけじゃなく、もう少し内容を深掘りしたいけれど、出典や文献をたどってエビデンスを取ろうとすると時間がかかり過ぎる。それでは研究の領域に踏み込んでしまい、膨大な作業になってしまう。」
「とはいえ、もし内容を妥協するならせめて ‘私たちも初心者です’ とはっきり伝えたい。」
「むしろ、歴史初心者の私たちが学びながら書くスタイルにした方が、より親しみやすい読み物になるのでは?」
このように考え、山本に提案しました。
つまり、「物語としての面白さ・奥深さを伝えるべく、アンティークコインに関する情報をみなさんと共に学びながら発信していきます」というのが、より正確な本連載の目的です。
【なにを読むんですか?】
店主の山本がコイン事業を始めるにあたり、とある海外のディーラーに「まず何を使って勉強したらよいか」と訊ねたところ、「David R. Searの本を読め!」と勧められたそうです。
David R. Searと言えば、王立貨幣協会やIAPN(国際貨幣学協会)から授賞されている、コイン界の権威の一人です。
まず読み進めるのは、Searの最新シリーズ『An Introductory Guide to Ancient Greek & Roman Coins』(古代ギリシャ・ローマコイン入門)です。このシリーズは、コインカタログとしての側面が強かったSearの過去の著書とは異なり、26世紀以上前のアジア西部から、西ローマ帝国の滅亡(5世紀後半)までの1100年間にわたり、コインがどのように誕生し、伝承され、発展してきたのか、その歴史的背景を解説することを目的としています。
コインに刻まれた歴史をひも解きながら、その魅力的な世界へ、私たちと一緒に旅立ちましょう。
【マガジンタイトルの由来】
意思決定のパラドックスの一つに「ビュリダンのロバ」と呼ばれる話があります。
空腹のロバが、左右に全く同じ距離・量・質の干し草が置かれた分かれ道の真ん中に立っています。この時、ロバは非常に合理的な判断が可能であると仮定すると、どちらの選択にも優劣が無いため、どちらを選択するか決められず、最終的には何も選ぶことなくその場で餓死してしまう、という話です。
この寓話は、合理性の限界について大きな示唆を与えてくれます。
例えば、「どちらの服を買うべきか決められず、結局どちらも買わずに帰る」といった経験は、皆さんにもあるのでは無いでしょうか。これは一種の「ビュリダンのロバ」状態と言えるかもしれません。
しかし一方で、人間には「迷ったままでも前に進むことができる」という特性があります。
それは時に非合理で、時に不完全ですが、だからこそ人間らしさでもあり、力強さでもあるのでしょう。
歴史とは、幾億もの人々が迷いながらも選択し、歩み続けてきた軌跡に他なりません。
アンティークコインは、そうした人間の選択と歩みの痕跡を、そっと私たちに教えてくれる存在だと考えています。
コインを通して歴史を学ぶ中で、人々がどのように迷い、何を選び、どのように生きたのか。
その姿の一端を、少しずつでも皆さまと共有できたらと思い、このマガジンに「迷ったまま前に進むマガジン」と名付けました。
私たちもまた、かつての人々と同じように、迷いながら、それでも前に進んでいきます。
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