コインの中には、美しさや価値だけでなく、神秘的な力が宿っているとされるものが存在します。
歴史を通じて、こうしたコインが持つ不思議な逸話が数多く語り継がれてきました。
そして、その「神秘的な力」が、コインの魅力と価値をさらに高めているのです。
今回は、そんな特別な力を持つと信じられているコインについて、ご紹介させていただきます。
幸運を運ぶ守護天使
当店でも度々ご紹介しているフランスの100フラン エンジェル金貨は、「幸運を運ぶ守護天使」として知られています。
このコインは、フランスのデザイナー、デュプレによってデザインされました。彼は、このエンジェル金貨に「守護の力」を宿らせたと主張し、やがて世界的に「幸運の象徴」としての地位を確立することになります。
物語は1792年、フランス革命期のルイ16世から始まります。
デュプレはルイ16世から新しいフランスコインのデザインを依頼されました。
しかし、台座に立つ天使がフランスの憲法を書いていると解釈され、このデザインは「民主主義の台頭」を象徴するものと見なされました。
これが当時の君主制への脅威とされ、デュプレは王の信頼を失うことになります。
デュプレはその後、革命の混乱の中で死刑を宣告されましたが、奇跡的に刑を免れました。
現実的な話、看守を説得する際、賄賂としてこのエンジェル金貨を使用したと言われています。
この出来事が広まったことで、エンジェル金貨は「幸運をもたらす天使」としての名誉を得ることになりました。
様々な逸話
ナポレオン・ボナパルトも航海の際には常にこのエンジェル金貨を身に着けていたと伝えられています。
そして、彼が大敗を喫したワーテルローの前日に、コインを失ったという逸話があります。
第一次・第二次世界大戦においても、フランス、イギリス、アメリカのパイロットたちがこのエンジェル金貨をお守りとして携行しておりました。
エンジェル金貨を携行していたパイロットは、無事に帰還したそうです。
時代を超えてこのコインが「守護の力」を持つと信じられてきました。
病を治すタッチピース
イギリスのエンジェル金貨も特別な力を持つと信じられ、タッチピースとして用いられました。
タッチピースとは、病気を癒し、幸運をもたらし、持ち主に不思議な影響を与えると信じられるコインやメダルのことを指します。
タッチピースの儀式は古代ローマ時代まで遡り、ヴェスパシアヌス帝が儀式で病人にコインを与えたそうです。
多くのタッチピースは、受け取った人に大切に所有され、何世代にもわたって一族が所有し続けることもあります。
イギリスのエンジェル金貨は15世紀に鋳造され、王が「王権神授説」を強調するための儀式でタッチピースとして使用されていました。
特にチャールズ1世は、ほとんどのエンジェル金貨をこの儀式に使用したため、完璧な状態のコインは非常に希少となっています。
このエンジェル金貨には大天使ミカエルが竜を倒す姿が描かれており、「善が悪に打ち勝つ」というデザインです。
ミカエルは病を追い払う守護聖人とされ、この図像が儀式の中で特に重視されてきました。
物語がコインの価値をより高めてくれます
コインの魅力はそのデザインや資産的な価値にとどまらず、こうした伝承や逸話が織り交ぜられている点にもあります。
これらの物語が、コインに対する思いをさらに強くしてくれます。
私自身、フランスのエンジェル金貨が特にお気に入りです。
デザインの美しさ、価値、そして何よりも、持ち主に幸運をもたらすという言い伝えには、心を惹かれずにはいられません。
コインを愛する皆様にも、この神秘的な魅力を少しでも感じていただければ幸いです。